「練習ではうまくいくのに、試合や本番だと緊張していつもの力が発揮できなくて…」
「ミスすると自信がなくなり、不安になって切り替えることができません…」
「試合前は緊張して少し元気がありません…やる気アップさせる何かいい方法ありますか?」
「練習試合」や「公式戦」、「トレセン」やジュニアユースなどの「セレクション」などの本番では、【緊張していつものパフォーマンスが発揮できない】と悩んでいる人は多いのではないでしょうか。
『緊張するな!』『気合を入れろ!』『集中しろ!』と言われても…余計、プレッシャーになり緊張は増すばかりになります。
それではどのようにすれば「緊張をコントロール」できるのでしょうか。
わたしは、大学で「体育学」を専攻し、運動生理学や運動心理学など運動に関するさまざまな知識や技能を学び、「スポーツメンタルトレーナー」の資格を取りました。
サッカーなどスポーツをするうえで、体力や技術と同様に「心のコントロール」も重要になります!
そこでこの記事では、『緊張をコントロールして力を発揮できる状況を自分で作り出す』方法を5つ紹介します。
この記事を読めば、自分の力で緊張をコントロールして、力を発揮するためのスキルを身につけることができます!
- 本番では緊張していつものパフォーマンスが発揮できない…
- 本番で緊張しないための方法を知りたい!
という人は、ぜひ最後まで読んでみてください。
「心をうまく整えて」、ぜひ試合で最高のパフォーマンスを発揮してください!
試合で緊張するのはメンタルが弱いからではない
大きな試合や、自分にとって大切な場面であるほど、人は「緊張」してしまうものです。
緊張すること自体は決して悪いことではありません。
緊張という反応が生じるのは「生理的反応」という脳の自然な働きなのです。そのため、緊張をなくすことはできません。
『緊張はなくすのではなく、コントロールするものなのです!』
もしあなたが緊張をして力が発揮できないと感じているなら、それは「心(メンタル)が弱い」からではありません。
・「緊張」とは何かという理解が間違っている
・「緊張」をコントロールする方法が間違っている
このことを認識することが大切です。
「緊張」とはいったい何?
「緊張」とは、脳が環境を生き抜くために備わっている闘争(逃走)反応です。
そのため、「試合」という【戦い】の状況で、自分の行動が何らかの成果につながる可能性があったり、危険を感じたりしたときに自然と生じる生理反応なのです。
もう少し詳しく説明すると、脳に生じた反応によって「自律神経」の働きに変化が起こります。緊張していると感じるのは、平常時とは違う自律神経の働きを感じ取っているのです。
自律神経には、「交換神経」と「副交感神経」というものがあります。
交換神経は、緊張しているときに働きが活発になり、副交感神経はリラックスしているときに活発に働いています。
スポーツで試合をする状況下では、試合という刺激が脳に伝わり、交換神経の働きが活発になり、内臓などの血管が収縮して脳と筋肉に血液が多く流れたり、呼吸が激しくなったりと身体が戦うための準備をはじめます。
また、試合が終わってホッとするときは、副交感神経の働きが自然と活発になり、心身ともに休息に向かいます。
このように2種類の自律神経にそれぞれの役割があります。
緊張して力が発揮できないというときは、交換神経の働きが強くなっている場合が多いのです。
その過剰な反応とは、「筋肉の強い張り」であったり、「呼吸の乱れ」であったりするため、パフォーマンスの低下につながるのです。
「緊張」は、自律神経がもたらす生理反応なので、その状況下では自然と生じるものです!
「緊張」をどうすればいい?
「緊張」は、自律神経がもたらす生理反応であることを説明してきました。
それでは、この「緊張」に対してどうすればいいのでしょうか?
それは、『緊張をコントロール』することです!
スポーツにおいて緊張は、闘う・もしくは逃げるという通常よりも運動能力を高める必要がある行為の準備なので、必要不可欠なものです。
試合前などには、「緊張するな!」「落ち着いていけ!」「もっと集中しろ!」と言われることがあると思います。
緊張は試合をすることを意識したら自然と起こり、自分の力を出し切るために必要なものなので、受け入れてコントロールできる力を身につけることが大切です。
メンタルが弱いと感じている人は、緊張によって生じる生理反応を少なからず「不快」だと感じている傾向が強いです。
緊張すること自体は悪い事ではありません。でも、緊張によって「頭が真っ白」になってしまったり、「やる気や集中力が低下」してしまったりすると、実力が発揮できません。
逆に言うと、たとえ緊張していても、力を発揮できる状態に、「切り替える」「コントロールする」方法さえ知っていれば、最高のパフォーマンスが可能になるのです。
緊張や興奮のレベルが高すぎても低すぎてもパフォーマンスは低下します。
緊張や興奮が高すぎると、「力みや焦り」などが生じます。反対に、それらが弱すぎると「意欲や集中力の低下」につながります。
このバランスをうまくとり、自分が実力を発揮できる状態にもっていくことが必要です。
- 緊張・興奮レベルが強い=「リラクゼーション」で気分を落ち着かせる
- 緊張・興奮レベルが弱い=「サイキングアップ」で気分を高揚させる
メッシやネイマールなど世界の一流選手も、「緊張をうまくコントロールして」最高のパフォーマンスを成し得ているのです。
メンタルトレーニングを通して、自分で自分の心をコントロールする能力を高めていきましょう!
緊張は、なくすのではなくメンタルトレーニングを通して「コントロール」します!
緊張をコントロールする方法5つ!
「緊張しないように」「いつも通りの気持ちになろう」と考えていても効果はなく、緊張をうまくコントロールすることがスポーツをするうえで重要です。
そもそも緊張することは、良いパフォーマンスを発揮するための条件で、緊張することによって生まれるエネルギーをどのようにパフォーマンスに活かせるかが大切です。
緊張をコントロールするためには、緊張と興奮のバランスをちょうどよい状態にします。
緊張や興奮のレベルが高すぎても低すぎても、パフォーマンスは低下します。緊張と興奮のバランスが大切です。
緊張と興奮のバランスを自分でコントロールして、一番よい状態、つまり力を発揮できる状態にもっていきましょう。
ここでは、『緊張をコントロールする方法を5つ』紹介します。
- 「呼吸」で心を切り替える!
- 「筋弛緩法」で全身リラックス!
- 「フォーカルポイン」(目線)で集中力アップ!
- 「姿勢」でプラス思考に!
- 「サイキングアップ」でやる気アップ!
①「呼吸」で心を切り替える!
緊張しているとき、呼吸はどのようになっているでしょうか?
実際に緊張した場面を思い浮かべながら、そのときの呼吸の状態を振り返ってみてください。
緊張すると呼吸は浅く、速くなっています。
また、反対にリラックスしているときの呼吸はどのようになっているでしょうか?
今度はリラックスしている自分を思い浮かべてみてください。
リラックスすると呼吸は深く、ゆっくりしています。
「呼吸」と「自律神経」の関係
なぜ息を吐くだけでリラックスできるのかと言うと、それは「人間の呼吸と自律神経」に密接な関係があるからです。
人間は息を吸うと、自律神経のうちの交感神経が活性化する性質があります。この交感神経が活性化すると、緊張が高まってしまいます。
一方、息を吐いた場合は、自律神経のうちの副交感神経が活性化されます。この副交感神経が活性化すると、リラックスできます。
したがって、「緊張が高まった場合」は、「息を吐く」ことで副交感神経を優位にするようにすればいいのです。
- 【緊張】=「交感神経が活性化」=「息を吸う」
- 【リラックス】=「副交感神経が活性化」=「息を吐く」
「腹式呼吸」と「イメージトレーニング」のやり方
人間はゆっくり深く呼吸しながら緊張することはできません。
呼吸の状態を変えることで、「心と身体」の状態も切り替わります。
「呼吸法」はいつでも、どこでも、誰にでもできるコントロール方法です。
それでは、実際にどのように呼吸をすればよいか解説します。
① 細くゆっくりと口から息を吐く
- お腹がへこむように
- ストローをくわえて吐く感じで
- 細く・ゆっくりと
- ネガティブなイメージや不安をすべて出し切るイメージで
- 口から息を吐く
② 深くゆっくりと鼻から息を吸う
- お腹をふくらませながら
- 深くゆっくりと
- 成功やプラスのものを取り込むイメージで
- 鼻から息を吸う
ゆっくりと3回繰り返しましょう!
日ごろからこの「呼吸法」を練習すると、心が穏やかになり、安定した状態になります!
②「筋弛緩法」で全身リラックス!!
緊張しているときは、肩や全身に力が入って「ガチガチ」になってしまっています。
そんなときに、「力むなよ!」「身体の力を抜いていけ!」と言われても、なかなか身体は言うことを聞いてくれません。「力を抜かなきゃ」と思えば思うほど、逆に力んでしまうことになります。
では、このようなとき、どのようにして力を抜いて「リラックス状態」にもっていけばよいのでしょうか
「筋弛緩法」とは?
「筋弛緩法」(きんしかんほう)とは、いったん力を入れてから力を抜くと、一緒に無意識に入った力を抜くことができる方法です。
実は、わたしたちは、緊張などで無意識に入った力は抜くことが難しいのですが、自分で意識して入れた力であれば、自分で簡単に抜くことができるのです。
- 「無意識」に入った力は抜くことが難しい
- 「意識」して入れた力は簡単に抜くことができる
「筋弛緩法」のやり方
力を入れたあとに、力を抜いて「リラックス状態」を感じます。
- 両肩を首につけるように8割程度の力を入れる(数秒間)
- 吐く息とともに、ストンと肩の力を抜く
この力が抜けた感じが「リラックス状態」となります。
この筋弛緩法は、肩の力に限らず、他の力を抜くことにも使えます。
例えば、「手の力を抜く」なら、いったんこぶしを強く握りこんでから、力を緩めて手を開いていけばOK!
「全身に力が入ってしまっている」なら、両手を上にあげて、背伸びをした状態から一気に脱力するというやり方も効果があります。
身体が硬直していると、頭も硬直して、本番で力を発揮することは難しいですね
緊張で余計な力が入りすぎていると、本来の力が発揮できません。いったんわざと力を入れてから、一気に力を抜くと、余計な力が簡単に抜けます!
③「フォーカルポイン」(目線)で集中力アップ!
『おい!もっと集中しろ!』
『切り替えろ!』
なんて、指導者が子どもに対してげきを飛ばしているシーンをよく見かけます。
そんなことを言われても簡単に集中したり、切り替えたりできるのなら、子どもだってとっくにやっているはずです。
ミスが続いて集中できなかったり、切り替えられなかったりしたときに、自分で心をコントロールする方法を紹介します。
「フォーカルポイン」とは?
何か特定の一点を見つめることで集中状態をつくれることをスポーツ心理学で【フォーカルポイント】と言います。
実は、集中するときには、とても大事なことがあります。
それは「視点を定める」ということです。
人間は不安を抱えているときや、イライラしているときなどは、視線があちこちに動いてしまいます。このように視点が定まらないと集中できなくなる特徴があります。
特に、緊張している状態や、想定外のことが起きて気が動転しているようなときは、自然と視点が泳いでしまうため、まったく集中できない状態に陥ってしまいます。
逆に言えば、脳は視線が一点に定められると自然と集中してしまいます。
このように視線を一点に集中させることによって集中状態をつくる方法がフォーカルポイントなのです。
試合中や練習中で、集中力を立て直さなければならないときなどはとても有効で、集中力を高めるのに「フォーカルポイント」という心理的なテクニックはよく使われます。
「フォーカルポイント」のやり方
「〇〇を見たら集中」と、あらかじめ視線を向ける対象を決めておきます。
- 視線(フォーカルポイント)を定める
- 集中が切れたり、切り替えたいときにその対象を見る
- 心理状態に応じて、同時に「呼吸法」や「筋弛緩法」などを行う
試合場のある場所一点を決めて、そこを見ると「集中力が高まる」「集中力が回復する」など、気持ちを切り替えるきっかけになるポイントを定めておきます。
ただ一点を見るだけではなく、自分の今の心理状態に応じて「呼吸法」や「筋弛緩法」などを行うとより効果を発揮できるようになります。
例えば、サッカーのPKで蹴る前に、ボールにフォーカルポイントを定め、大きく「呼吸法」を行います。
また、ミスをしてしまったあと、事前に決めていた試合会場のある一点を見つめながら、手をグッと握って全身に力を入れて一気に脱力してから(筋弛緩法)、「よし!」と声を出す(セルフトーク)などがあります。
このように集中したり、気持ちを切り替えたりするときにフォーカルポイントを使い、それをきっかけにあるコントロール動作を合わせて行ってみてください。
「視点を一点に定めると自然と集中する」という脳の仕組みを利用して、集中状態を自分で作れるようにしましょう!
④「姿勢」でプラス思考に!
「思考」と「行為」を変えれば、「心と身体」の状態は変わります。
人間には、表情や動作が身体に影響を及ぼすという性質があります。
つまり、「姿勢(行為)」を意図的に変えることで、心や身体のコンディションを整えていくことができるのです。
例えば、「笑顔」をつくるだけで脳は「この状況は楽しいんだ!」と勘違いして、脳幹からドーパミンが分泌され、能力を発揮しやすくなります。
不安や緊張に陥ってしまったときは、姿勢を整えることで前向きな心と体の状態を作ってみましょう。
それでは実際にどのような方法があるのか例をあげて紹介します。
サッカーならグラウンド(ピッチ)でプレーします。
そこで「胸を張り上を向いて空を見上げる」という動作でもいいでしょう。この動作の中には、胸を張って「自信」がある姿勢や態度をとり、顔を上げて上を向くことで頭の中をプラス思考にする目的があります。
また、失点したあとに『下を向いてないで切り替えていこう!』というかけ声を聞いたことがありませんか。
これは理にかなっていますね。
普段から「胸を張る」「背筋を伸ばす」など「姿勢」を意識して取り組むことで、前向きな気持ちを維持することができます。
「えっ、たったこれだけ!?」
と思うかもしれませんが、大きな効果があります。それは「心と身体」はつながっているからです!
日常から「姿勢」を意識して取り組んでみましょう。
「姿勢」以外にも、「目線を上げる」「胸を張る」「声に力を込める」なども同じような効果があります。
「姿勢(行為)」は、「感情や生理反応」に影響します。「姿勢」を意図的に変えることで、心や身体のコンディションを整えていくことができます!
⑤「サイキングアップ」でやる気アップ!
「思考」と「行為」を変えれば、「心と身体」の状態が変わることを説明してきました。
先ほどは「行為=姿勢」でしたが、今回は「思考=言葉」です。
人間の身体は、発した言葉の影響を受けます。
つまり、元気の出る言葉を口にするだけで自然と体が目覚めてきます。
そこで、【サイキングアップ】というものがあります。別名【エネルギーコントロール】とも言われているメンタルトレーニングの一つです。
スポーツ心理学では、「リラクゼーション」と「サイキングアップ」の両方を使って、その時の心と身体の状態をコントロールします。(*緊張と興奮のパフォーマンス発揮の関係:逆U字仮説の図を参考にしてください)
サイキングアップをすることによって脳内ではドーパミンが分泌され、練習や試合に対するやる気や集中力がアップします。先ほどのリラクゼーションとは反対のイメージをするとわかりやすいですね。
サイキングアップ法は、主に気分を上げるために行われます。
サイキングアップでよく行われるのは、「声出し」です。
試合前に円陣を組んで『よーし!いくぞー!』と全員で声を出す行為はまさにサイキングアップによる気合い注入ですね。
ラグビーのニュージーランド代表(オールブラックス)が、試合前に「ハカ」という儀式を行います。もともとは、オセアニア地域の先住民族が戦いの前に戦意高揚の意味でやっていた踊りです。これはサイキングアップの代表と言えるでしょう。
別に大きい声を出さなくても効果はあります。
例えば、深い呼吸でリラックスさせた状態で、『よしいくぞ!』と自分で自分に話しかけ(セルフトーク)、集中力をアップさせ、気持ちを「のせる」という心理的なテクニックもあります。
また、サイキングアップは試合前のやる気アップだけでなく、試合中負けているときや失点してしまったときなどに、プラスの声出しをすることで気持ちを切り替える効果もあります。
サイキングアップには声出し以外にもさまざまな方法があります。
- アップテンポな音楽を聴く
- 身体を動かし心拍数や体温を上げる
- からだの部位を軽くたたく
- ハイタッチをして気持ちを盛り上げる
よくトップアスリートが試合前にイヤホンをつけて音楽を聴いてるシーンを見かけますよね。これはサイキングアップを通して、心を整え、モチベーション・集中力をアップさせているのです。
普段から試合前には自分のお気に入りの音楽を聴いたり、マイナスの言葉を吐かないで、プラスの声を出し続けるなどの習慣もトレーニングの一つになります。
日頃から意識して自分のまたはチームのサイキングアップ法に取り組んでみましょう!
まとめ
「緊張」というものがどういったもので、どのように対応すればよいかおわかりいただけましたでしょうか。
大切なことは…
・「緊張」とは何かということを理解すること
・「緊張」をコントロールする方法知り、実践すること
『緊張はなくすのではなく、コントロールするものなのです!』
それともう一つ大切なことは、日ごろから意識して取り組むことです。
自分が「緊張」という状況・状態に陥ったときはきっとコントロールをすることなんて忘れているでしょう。
しかし、日常から意識して取り組んでいると、自然と自分の力でコントロールし、力を発揮することができるようになります。
今回紹介したセルフコントロール法は、子どもでも自分一人でできます。ぜひメンタルトレーニングを通して「本番に強い自分」を作り上げてくださいね!
最後に、今回紹介したセルフコントロール法は、「緊張」や「やる気・集中力アップ」などを自分で実践できるメンタルトレーニングです。
大事な試合などの「本番」で緊張をせず本来の力を発揮するためには、これらのメンタルトレーニング以外に、食事や睡眠などの「基本的な生活習慣」や体調管理など「本番への準備」、「技術」「自己肯定感」「自信」「積極性」…さまざまな要因が必要となります。
それらは、「本人自身の取り組む姿勢・態度」や、「親や指導者による関り」などが大きく関与してきます。
サッカーを通して、ますます「自立した頼もしい子どもの育成を目指して」メンタルトレーニングと合わせてサポートしてあげてください!