「うちの子は親と似て運動神経が悪くて…」
「他の子と比べて動きが鈍くて…」
「どのようなことをしたら運動神経が良くなりますか?」
「サッカー以外の運動もした方がいいですか?」
このような親御さんの声をよく耳にします。
長年、教員やサッカー指導者としてたくさんの子どもたちと関わってきましたが、年々子どもたちの運動能力は低下しています。
スキップができなかったり…
すぐにつまずいてこけてしまったり…
その背景には、子どもが身体を動かして外で遊ぶ機会や場所が減り、「運動体験」を得ることが難しくなっていることが考えられます。
また、身体活動による遊びではなく、スマートフォンやゲーム機器などを用いて遊ぶ子どもが増えていることが運動能力の低下につながっています。
そこでこの記事では、「幼児期にできる!遊びを通した運動神経を育むための方法」を、5つのポイントに分けて解説していきます!
必ずこの力は、サッカーにも生かせるようになります!
- 「運動神経」について
- 「運動神経」を育てる3つの動き
- おすすめ!「運動神経」を育てる遊び7選
- 幼児期の子どもの特徴
- 親のサポートの仕方
子どもは「無限大の可能性」を秘めています。
この記事を参考にして、子どもの運動能力を育むサポートを実践してみてください!
わたしの息子は、幼児期のころから身体を動かして遊ぶことが大好きでした。外遊びで培った力は、サッカーにも大きく影響しています。
🔶年長時には「リフティング2000回」を達成することができました!
1.「運動神経」について
「運動神経が良い・悪い」
という言葉をよく耳にしますが、
そもそも…
・「運動神経」って一体なに?
・パパ・ママが運動苦手なら、子どもにも遺伝するの?
と、言うような親御さんの悩みについてわかりやすく解説していきます。
大学で「体育学専攻」、教員として「体育科」
を専門として取り組んできた"らいおん先生"がお答えします!
「運動神経」とは?
「運動神経」とは、脊髄から筋肉まで伝わる神経の種類の一つで、筋肉を動かす役割を担っている末梢神経のことを言います。
人が手足などの体を動かすときは、脳などの神経が体の神経回路を通して筋肉に指示を出します。その指示が筋肉に伝わり「自分が思った通りに体を動かす」ことができます。
しかし、一般的に使われている「運動神経が良い・悪い」という意味は、これらの神経だけでなく、さまざまな感覚を統合する中枢神経の役割も大切になります。
つまり、一般的に言う「運動神経」とは「運動能力」と呼んだ方がイメージしやすいかもしれませんね。
「運動神経が良い」=「運動能力が高い」
「運動神経」は遺伝するの?
結論から言うと…
運動神経は遺伝するものでもなく、生まれもったものでもありません。
前に解説した通り、世間一般に言う「運動神経」とは、「運動能力」のことです。
「運動能力が高い」ということは、自分の身体を上手に動かすことができるということです。
つまり、
「運動神経が良い」=「運動能力が高い」⇒「運動経験」が豊富!
幼少期からの運動経験値の差によって「運動能力の違い」が生じます!
「運動神経」は何歳までに決まる?
生まれながらに私たちの身体には運動神経を含むさまざまな神経機能が備わっており、成長と共に発達していきます。
それらの「神経系」の発達はいつ頃から始まるのでしょうか?
下図は、「スキャモンの発育発達曲線」という有名な図です。
引用:保健体育審議会
「神経系」の発達の面を見ると、6歳ごろにはすでに大人の90%に達しています!
脳から筋肉へ伝達する運動神経のネットワークは2歳ごろから形成されます。その後、飛躍的に発達し9歳~12歳までにはほぼ完成するのが一般的です。
つまり、「幼少期(12歳ぐらい)」までの運動経験が大切になってきます。
特に!
幼児期(6歳)ぐらいまでの運動環境・運動経験が重要!
もう一つ大切なことがあります。
それは、この時期にサッカーに限らず…
さまざまな運動を経験すること!
身体を動かすことが好きになること!
たくさんの動きのパターンを経験し、運動の基礎となる脳の神経回路を育むようにしましょう。
「運動神経」は、特に「幼児期」のころからの「運動環境」や「運動経験」の違いで変わってきます!
しかし…
この時期にどんなことをさせたらいいのでしょうか?
次に、幼児期からできる「運動神経」を育む方法について解説していきます!
2.「運動神経」を育てる3つの動き
幼少期の運動神経を通じて得られる動きは、大きく3つに分けられます。
- 身体のバランスに関わる動き 立つ・座る・寝転ぶ・起きる・回る・転がる・ぶら下がる・渡る・乗る
- 身体の移動に関わる動き 歩く・走る・跳ねる・跳ぶ・登る・下りる・滑る・はう・よける・泳ぐ
- 道具の操作に関わる動き 持つ・運ぶ・投げる・転がす・蹴る・こぐ・当てる・取る・積む・振る
運動能力の高い子は、こうしたたくさんの動きを体験していることが特徴のひとつです。
それぞれを見てみると決して複雑なものではなく、日常的な運動遊びのなかで体験できるものばかりです。
このような動きが組み合わされた運動をすることで、身体を上手にスムーズに使う「コーディネーション能力」が身につきます。
幼児期からさまざまな動きをすることで、運動神経を伸ばしていくことが可能になります。
どれも「日常生活」や「普段の遊び」の中でできる動きです!
詳しくは、中村和彦氏(山梨大学理事)著書『運動神経がよくなる「からだ遊び」』を参考にしてみてください。
人間の基本的な動きは「36種類に分類できる」とし、以下の「36の基本動作」を幼少期からバランスよく身につけることが望ましいと述べられています。
3. おすすめ!「運動神経」を育てる遊び7選
次に、幼児期のころから日常生活や遊びを通して「運動神経」を育てる方法を7つ紹介します!
これらは、実際に我が家が行っていた「おすすめ」の方法7選です!
ぜひ取り組んでみてください。
- おにごっこ
- ボール遊び
- 器械運動(鉄棒・マット運動・跳び箱・トランポリン)
- 水泳
- 総合遊具
- のりもの遊び(二輪車)
- コーディネーショントレーニング(動きづくり)
サッカーの練習に関する『親子で一緒に楽しくからだを動かす』ことをテーマにした練習メニューはこちらで紹介ています↓
①おにごっこ
言わずと知れた「おにごっこ」。
この「おにごっこ」こそが、運動神経を伸ばすのに必要な動きが網羅された遊びです。
また、サッカーに通ずる『最強の遊び』と言えるでしょう!
おにごっこは、「走る」「止まる」「急な方向転換」など、さまざまな動きを習得できます。
「おにごっこ」は、幼児期に必要な多様な動きの獲得や、体力・運動能力の基礎を養う運動です。
「増えおに」や「氷おに」など、たくさんのバリエーションがあり、それぞれのルールの中で協力し合ったり、コミュニケーションを取ったりすることが必要で、脳の神経回路を増やしていくのに役立ち、創造性や社会性なども合わせて育むことができます。
- 幼稚園から帰ってきたら、近くの公園で友だちと「おにごっこ」!
- 小学校では、休み時間は「おにごっこ」!
幼稚園時は、「生活の習慣化」を図り、外遊びの時間を必ず作るようにしていました。
「おにごっこ」を通して、とにかく走りまくっていました。
そして、遊びの中で新たなルールをどんどん開発していきます。
この体力や創造性豊かな部分は、サッカーに大いに役立ちます!
また、おにごっこと言えば、大勢で遊ぶイメージがありますが、工夫すれば親子や兄弟姉妹など2人でもできます!
わたしはメニューを工夫して息子とよく一緒に遊びました。
詳しくは、こちらで解説しています。
②ボール遊び
ボール遊びは、「投げる」「つかむ」「蹴る」「持つ」「運ぶ」「打つ」「捕る」など、習得できる基本動作は無限大です。
さまざまなボール遊びをすることで、その違いを感じ取り「運動神経」の発達を促します。
また、サッカーにも通ずる「空間認識力」なども養えます!
我が家では、庭や家の中にさまざまな種類のボールを常に転がして置いていました。
気がつけば、ひとりで「蹴ったり」「投げたり」ボール遊びをしていました。
プラスティックバッドを用いて、一人で投げて打つ、いわゆる野球の「ノック」もやっていました。
- 「キャッチボール」「バッティング」
- 「ボール扱い」
- 「ボールフィーリング」
キャッチボール・バッティング
キャッチボールと言っても、野球のグローブと軟球を用いて遊びでやり始めたのは2年生ぐらいからです。
それまでは、ゴムやスポンジ製の柔らかいドッジボールや野球のボールで遊んでいました。
基本的には、「投げる」「捕る」「打つ」です。
「打つ」のは、プラスティックバットを使っていました。(100均などで売っています)
道具はいろいろな種類がありますが、安全・安心の理由から、「軽い」「柔らかい」がポイントです。
値段もそんなに高くないので、我が家ではさまざまな種類のものを購入して使っていました。
ボール扱い
野球やドッジボール、サッカーなどは、手や足で「ボールを扱う」運動ですが、ここではそれにつながる「ボール扱い」の遊び・トレーニングを一部紹介します。
これらの「ボール扱い」は、サッカーボールでなくてもOK!です。
ボールフィーリング
次は、サッカーにつながる「足でボールを扱う遊び」を紹介します。
今回、これらの「ボール扱い」「ボールフィーリング」は、幼児向けの内容となっています。
屋外でも室内でも気軽にできます。
親子で一緒に"楽しく"取り組んでみてください!
③器械運動(鉄棒・マット運動・跳び箱・トランポリン)
「鉄棒」「マット運動」「跳び箱」「トランポリン」などの器械運動は、幼児期に必要な「運動神経」を育てる3つの動きがすべて含まれている運動と言っていいでしょう。
器具やリズムを使い、幅広い運動を経験することで、基礎的な運動能力を高めることができます。
そのため、幼児期のうちから体操教室に通っている子どもをよく見かけます。
- 身体のバランスに関わる動き 立つ・座る・寝転ぶ・起きる・回る・転がる・ぶら下がる・渡る・乗る
- 身体の移動に関わる動き 歩く・走る・跳ねる・跳ぶ・登る・下りる・滑る・はう・よける・泳ぐ
- 道具の操作に関わる動き 持つ・運ぶ・投げる・転がす・蹴る・こぐ・当てる・取る・積む・振る
体操教室には通わず、自宅で環境や場の設定、内容を工夫して遊ぶことができます!
鉄棒運動
「鉄棒」は昔、木の枝に乗り方をいろいろ工夫して競ったのが始まりと言われています。
「あがる」「支える」「ぶら下がる」「まわる」「おりる」など一連の動きがあります。
息子がまだ小さいころ、近くの公園によく鉄棒遊びをしに一緒に行ってました。
でも、毎回行くのは少し時間がかかるので、室内用の鉄棒があれば便利ですね。
「鉄棒」のメニューを一部紹介します。(幼児初級編です)
「場の工夫・支援」は、親にできる大切なサポートの一つです!
マット運動
前転、後転、開脚前転などの「マット運動」は、多くの方が小学校の体育で経験したことがあるでしょう。
「マット運動」は、四肢を大きく使って、「しゃがむ」「転がる」「逆さになる」「回転する」「支持する」などさまざまな動きをイメージしながら行います。
幼児期に行うことで、脳・脊髄神経と関節・筋肉の連携をスムーズにする効果が期待できるでしょう!
幼児期に安全に「運動する楽しさ」を実感するにはマット運動がぴったりです。
体操教室にあるような本格的なマットがなくてもOK。
市販の家庭用体操マットや、厚手のヨガマットがあれば、ご自宅で簡単にマット運動を始められます。
我が家では、適度な固さのある布団(マットレス)でマット運動を行っていました!
発達段階や個人の実態に応じて、楽しみながらやってみてください!
跳び箱
「跳び箱」も「マット運動」同様、小学校や幼稚園、保育園の体育の時間に必ずと言っていいほど取り組みます。
しかし、「跳び箱が苦手」「こわい」というお子さまも多いのではないでしょうか。
「跳び箱」は、一回の跳躍で「走る」「タイミングよく踏み切る」「手をついて身体を支える」「開脚する」「手で跳び箱を押し超える」「バランスよく着地する」というたくさんの動作が必要で、身体を使う力が向上します。
息子は、幼稚園年長で「跳び箱10段」を見事に跳んでいました。
「ソフト跳び箱」なら、当たっても痛くないので怖がらず安心して遊べます!
「跳び箱遊び」のメニューです。
トランポリン
「トランポリン」は、自宅で気軽に運動(遊べる)できる最高のアイテムです!
また、全身の筋力を使い、有酸素運動にもなります。
とにかく子どもは「トランポリン」が大好きです!
我が家では、周りの安全に配慮して一室にトランポリンを置いていました。
気がつけばトランポリンに乗ってジャンプを繰り返していました。
④水泳
「水泳」は、子どもの習い事として大人気のスポーツです。
「水泳」で得られる効果はたくさんあります。
- 全身の筋肉や感覚機能を養うことができる。
- 効率良く心肺機能を向上させることができる
- 免疫力が向上する
幼児期は神経系の発達が著しく、4〜5歳には大人の約80%程まで成長すると言われるため、スイミングスクールに通わせ始めるのは、5歳までがおすすめです。
また水泳は、記録が「キョリ」や「タイム」など数値で表されるため、結果や目標設定が明確で、「主体的」に取り組む力を養うこともできます!
⑤総合遊具
公園には、「すべり台」「ジャングルジム」「ブランコ」「うんてい」などさまざな遊具があります。
それらは、子どもに興味・関心をもたせるだけでなく、「身体や運動能力」も育む効果があり、遊具ごとに身につく運動能力は違います。
つまり、総合遊具は『運動能力を伸ばすのに適した遊び』の一つとも言えるでしょう!
⑥のりもの遊び(二輪車)
自転車や三輪車などは、「ハンドル操作」「ペダルをこぐ」「ブレーキを使う」などたくさんの動作を組み合わせて行います。
こうした複雑な動作を繰り返すことで、コーディネーション能力が高められ、「運動能力」を効果的に高めることができます。
また、「足を踏み込むタイミング」や「力加減」、「バランス感覚」など繊細な身体の感覚も養うことができます。
我が家では、3歳のころから「ペダル無し自転車」に乗っていました。
これだと怖くなく、気軽に乗ることができます。
ペダルが無いため足で地面を蹴りつけます。
慣れてくると、ある程度スピードがつくと両足を上げ、上手くバランスを取りながら進んでいました。
もうこれは、ほぼ「自転車に乗れている」のと同じ状態と言えるでしょう。
そのため自転車の練習にはほとんど時間を使わず乗れるようになりました。
この『ペダル無し自転車』を通して、「脚力」「足の回転の速さ」「バランス感覚」などの力を身につけることができます。
⑦コーディネーショントレーニング(動きづくり)
「コーディネーショントレーニング」は、身体を思い通りにコントロールする力(コーディネーション能力)を高めるのに役立ちます。
トレーニングと言っても、幼児期のうちは「遊び」の中から運動神経を伸ばしていくことができます。
自宅でも気軽にできるので、ぜひ参考にしてみてください!
4. 幼児期の子どもの特徴
ここまで、幼児期のうちに「運動神経」を育てる遊びを紹介してきましたが、忘れてはいけない2つの大切なことがあります。
それは…
- 「幼児期の子どもの特徴」を理解すること!
- 「親のサポートの仕方」を知ること!
ただ単に子どもに「やらせている」ようでは、意欲が続かず逆効果になります。
そうならないためにも、まずはこの時期の「子どもの特徴」を理解することが重要です。
- 好奇心にあふれている
- 集中力がもたない
- 自己中心的で自由に遊びたい
- ほめられたい・見てほしい
- 一緒に遊びたい
- 学校生活の始まり~学校規律がストレスに~
- 幼児から児童へ~言葉で自分の動きをコントロール~
- 新しい運動の獲得~プレゴールデンエイジ~
- 大人への依存~子どもは大人を見ています~
- 成功したり、失敗したり~自己効力感を味わう~
子どもの特徴に合わせてサポートしていきましょう!
U6・U8の子どもの特徴については、こちらの記事で詳しく解説しています!
5. 親のサポートの仕方
すべては、親のサポートにかかっていると言っても過言ではありません。
それぐらい「親のサポートの仕方」が重要になってきます。
「幼児期の子どもの特徴」に応じてサポートを工夫しましょう。
- 一緒になって「遊ぶ!」
- とにかく「認める・誉める!」
- 小さな「成功体験を!」
- 一つの練習は「短く!」
- いろいろな「体の動かし方を!」
親子で「遊び」を通して、「身体を動かす」楽しさを知ることが大切です!
なお、「子どもの特徴」「親のサポートの仕方」について、こちらの記事でより詳しく解説しています。
ぜひ参考にしてください!
まとめ
「サッカーに役立つ!幼児期に運動神経を育てる」ための方法を、次の5つのポイントで解説してきました。
- 「運動神経」について
- 「運動神経」を育てる3つの動き
- おすすめ!「運動神経」を育てる遊び7選
- 幼児期の子どもの特徴
- 親のサポートの仕方
「神経系」の発達は、6歳ごろにはすでに大人の90%に達しているということ。
つまり…
- 幼児期(6歳)ぐらいまでの運動環境・運動経験が重要!
- さまざまな運動を経験すること!
- 身体を動かすことが好きになること!
そのためには、この時期の「子どもの特徴」を理解した上で、実態に応じた「親のサポートの仕方」が重要になってきます。
「親子で運動・遊び」を通して、子どもの「運動能力」を育んでいきましょう!